Hermes Agent — 第二の脳の実行エンジンとして位置づける
Nous Research が 2026 年 2 月にリリースしたオープンソースの自己改善型自律 AI エージェント。タスク実行 → 自動スキル生成 → 長期記憶更新の閉じたループを持ち、セッションを超えてユーザーを学習し続ける。
v0.14.0、SuperGrok OAuth 経由で grok-4.3 を駆動。Obsidian 公式スキル標準有効。Obsidian ヘビーユーザーにとって「静的な第二の脳」を「動的な実行エージェント」に化けさせる存在。
Hermes は単なるチャットボットではなく、「自己改善ループ × 常駐実行」を持つ AI エージェント。Obsidian と組み合わせると「自分と共に成長する第二の脳」が完成する。
本記事は 2026-05-18 にローカル Mac へ Hermes v0.14.0 を導入し、Obsidian Vault と接続して実際に動かした上での記録。SuperGrok OAuth により API キー課金ゼロのまま grok-4.3 駆動、Obsidian 公式スキルでの Vault 読み書き、delegate_task による親→子 3 並列実行(約 19.5 秒)、ネイティブゲートウェイ(Telegram/Discord/Slack/LINE/Signal/Teams ほか)、hermes proxy 経由で Codex/Aider/Cline への流用、すべて標準機能のまま動作を確認した。以降の機能解説はその実測前提。
- Hermes = Nous Research 製の OSS(MIT)自己改善型自律エージェント。タスク → スキル化 → 記憶更新の閉じたループを持つ。
- Claude/Grok が「セッション単位の高性能ワーカー」なら、Hermes は「24/7 動く常駐オーケストレーター」。排他ではなく併用が現実解。
- Obsidian 公式スキルで Vault 直接読み書き。静的な第二の脳が動的な実行エージェント基盤に進化する。
- セットアップは self-hosted 必須。スキル管理・併用ガードレール・Vault 規模が運用ポイント。
Hermes Agent とは何か
Obsidian をヘビーユースし、Claude や Grok などの先進 AI に馴染みのある個人にとって、Hermes Agent は「第二の脳の実行エンジン」として位置づけられる存在。
Karpathy 式 LLM Wiki 観点で言うと、Obsidian は「人間が読む・整理する静的な層」、Hermes は「その知識を読み込んで自動実行・更新・学習する動的な層」。両者は補完関係にある。
Hermes は「教えたら忘れない」「勝手に上手くなる」 AI。常駐して、cron で勝手に動き、使われるたびにスキルを増やしていく分身。
概要と立ち位置
Hermes Agent は Nous Research が 2026 年 2 月にリリースしたオープンソースの自己改善型自律 AI エージェント(MIT ライセンス)。キャッチフレーズは「あなたと共に成長する個人用 AI インフラ」。
2026 年 5 月時点の状況:
- バージョン: v0.14.0
- 駆動モデル: SuperGrok OAuth 経由で grok-4.3
- Obsidian 公式スキルが標準で有効化された状態
- self-hosted 前提(公式マネージドクラウドなし)
単なるチャットボットではなく、タスク実行 → 自動スキル生成 → 長期記憶更新という閉じたループを持ち、セッションをまたいでユーザーを学習し続ける構造になっている。
主要機能 5 つ
>3-1再利用可能なスキル自動生成
繰り返し行った作業を SKILL.md として自動保存・改善。同じ指示を 2 回目に出すと、Hermes 側で「あ、これは前と同じパターン」と認識し、手順を洗練したスキルファイルが残る。次回からは短い指示で同じ動作を再現できる。
>3-2永続記憶機構
MEMORY.md / USER.md / SQLite を組み合わせ、セッションをまたいだ文脈保持とユーザー嗜好の蓄積を実現。「前回こう言った」「このユーザーはこう書く」を覚えている。
>3-3ツール使用の厳格 enforcement
ツール呼び出しを必須とし、「計画を描いて終わり」を許さない設計。Obsidian スキル、ブラウザ操作、terminal 実行などを自律的に組み合わせて完遂する。これが Claude 単体との実用面での大きな差。
>3-4cron / webhook 対応
常駐型エージェントとしてスケジュール実行や外部イベントトリガーをネイティブサポート。「毎朝 X チェック」「Gmail に Y が来たら処理」のような自動化が標準で組める。
>3-5Obsidian 公式スキル
Vault の読み書きを直接行い、知識庫との双方向連携を可能にしている。daily/ に書き溜めたメモを Hermes が読み、結果を knowledge/ に書き戻す運用が標準パターンになる。
>3-6マルチエージェント並列実行(delegate_task)
標準ツール delegate_task により、親エージェントが独立コンテキストの子エージェントを並列起動できる(ThreadPoolExecutor)。5/18 の実測では Vault 内のジャンルが異なる 3 ノートを子に振り分けて要約させ、約 19.5 秒で 3 並列完了。子は親の会話履歴を見ないためcontext-cost ゼロ、子ごとに別モデル(軽量=grok-4-fast、複雑=grok-4.3、レビュー=Claude Opus)を割り当てる混在ルーティングも対応済。子は delegate_task 不可(孫サブエージェント禁止)で安全側に倒してある。
並列の価値は時短だけでなく、複数子の出力を統合する親視点でしか出ない「統合メタ抽出」にもある。さらに subagent-driven-development スキル(OSS 由来)が、計画駆動 + 2 段階レビュー(spec compliance / quality)込みのワークフローを標準で提供している。
Claude / Grok との違いと併用パターン
Claude(特に Claude Code)は高性能な即時推論・大規模コンテキスト処理・高品質なコード生成に優れている。一方、Hermes Agent は常駐性・自動化・自己成長に強みを発揮する。
多くの先進ユーザーが採用している典型パターン:
- Hermes をオーケストレーターとして位置づけ、定期タスクや長期プロジェクトの管理を任せる
- 複雑な推論や高品質な出力が必要な場面で Claude / Grok を呼び出す(ツール経由 or 手動委譲)
- Obsidian Vault を共有の知識源とし、Hermes が実行結果を Vault に書き戻し、Claude がそれを参照してさらに高度な分析を行う
hermes mcp serveで Hermes 自身を MCP サーバ化できる。Claude Code や Cursor から Hermes をツールとして逆方向に呼び出す二重オーケストレーション構成も可能hermes fallback addによる多モデル切替チェーン:grok-4.3 が rate-limit やエラーになったら Claude / OpenAI / OpenRouter へ自動フェイルオーバー。hermes proxy経由なら SuperGrok 契約のまま Codex / Aider / Cline / Continue にも使い回せる
SuperGrok OAuth + grok-4.3 を採用した現在の Hermes は、Grok の強力な推論能力をベースにしつつ、常駐エージェントとしての自律性を両立させている。
Obsidian 連携の意義
Obsidian は「人間が読む・整理する第二の脳」、Hermes は「その知識を読み込んで自動実行・更新・学習する分身」。役割が完全に補完的。
連携の意義は 3 つ:
- Obsidian に蓄積された生の daily ノートや knowledge MOC を、Hermes が直接読み込みスキル化・自動化の材料にできる
- Hermes の実行結果や学習した知見を Obsidian にフィードバックすることで、知識が複利的に成長する
- ユーザーは Obsidian という馴染みのある UI で全ての知識を管理しつつ、Hermes に「実行」を委ねられるため、認知負荷が大幅に低減する
Vault 内の knowledge/第二の脳 ノートでも整理した通り、Karpathy 式 LLM Wiki の「実行層」として Hermes を位置づけると、Obsidian の静的な知識庫が動的な AI エージェント基盤へと進化する。
Obsidian に蓄積するのは、完成された「暗黙知」だけではない。むしろ重要なのは、暗黙知になる前の思考の揺れ・違和感・仮説・迷い・判断の癖──ここでは「暗黙考」と呼んでいる(造語)。Hermes はその暗黙考を読み取り、整理し、実行に変える分身として機能する。
Obsidian = 思考をためる場所 / Hermes = 思考を使って動く存在。完成度の低いメモや矛盾した仮説もそのまま残す方が、結果として AI 分身の質が上がる。
実運用のヒント
- self-hosted 推奨:公式マネージドクラウドは存在しない。安価な VPS($5〜)やサーバーレス(Modal、Daytona)で運用し、使わない時間は休止させてコストを抑える
- Telegram / Discord 連携:常時アクセス可能なボットとして設定すれば、スマホからでも Hermes に指示を出せる
- スキル管理の習慣:Hermes が生成した
SKILL.mdは積極的にレビューし、必要に応じて手動で洗練。自動生成スキルは出発点として活用 - Obsidian 運用との同期:
daily/配下はラフな入力場として保持し、knowledge/層で MOC を整備。Hermes にはknowledge/側を主な参照対象として指定すると効率的 - 併用時のガードレール:Hermes に長時間タスクを任せる場合は定期的に進捗確認の cron を設定。Claude と併用する場合は、出力品質の最終チェックを人間が行うルールを明文化
- ワークフロー定義の 5 レイヤを把握しておく:
Skill(再利用手順)/Plan(実装計画 → サブエージェント自動分散)/Cron(定期実行)/Hooks(イベント駆動)/Script via RPC(LLM コスト 0 の定型処理)。Vault・Obsidian 連携に特化した機構ではなく、GitHub / Linear / メール / 任意 SaaS にも同じ枠で適用できる --no-agentで LLM コスト 0 の常駐:hermes cron createに--no-agentを渡すとスクリプトのみ実行になる。disk / memory ウォッチドッグ、API ヘルスチェックなどの常時実行物はこれで十分--workdirでプロジェクト文脈を注入:cron 時にAGENTS.md/CLAUDE.mdを自動で読み込ませられる。Vault と別プロジェクトリポを横断させる運用もこの仕組みで実現する- daily フォルダの自動化 3 パターン:①テンプレ自動生成(朝一の空 INDEX) ②前日要約 / 翌朝サマリ(cron) ③活動ログ(
~/.hermes/hooks/post_write_file.shで書き込みのたびに自動追記)。併用可
既知の制約
- 完全 self-hosted のため、セットアップと運用に一定の技術的負担がかかる
- 公式の視覚化ダッシュボードは存在するものの、高度なノードグラフ機能は Gitnexus スキルや Mermaid による自作対応が必要
- 複数の AI を併用する場合、コンテキストの受け渡しや責任範囲の明確化が運用上の課題
- v0.14.0 時点では Obsidian スキルの連携は良好だが、Vault 規模が極端に大きくなると検索パフォーマンスに注意が必要
Obsidian は静的な脳、Hermes は動的な分身
Hermes Agent は、Claude や Grok の能力を自分のサーバーで永続化・自動化・自分専用に進化させるプラットフォーム。Obsidian との組み合わせにより、本当に「自分と共に成長する第二の脳」が完成する。
個人として、Obsidian ヘビーユーザーであり、Claude / Grok を日常的に使う層にとって、次なるステップとして強く推奨される存在。
- Obsidian で蓄える(静的な第二の脳)
- Hermes が読み込み実行する(動的な分身)
- 結果を Vault に書き戻し知識が複利成長する(実行 → 知識化のループ)
この三つが揃った瞬間、「ブログを書く」「メモを取る」次元から、自分の脳が常時自走している状態へと変わる。